社員を採用するときは「採用稟議書」が必要になります。
なぜなら社員を採用することは経営判断であり、長期的な人件費にも大きく影響することなので担当部門長が判断できる範囲を超えているからです。
初めて「採用稟議書」を書く場合は何をどのように書くのか戸惑うことも多いと思います。
「採用稟議書」の書式や書き方は企業ごとに決まっていますが、人を採用するという目的は同じなので書かなければならない要素は決まっています。
また決済までの日数も企業規模によって変わってきますが、決裁者まで何段階を踏むのかによって決済日数は決まってきます。
この記事では社員採用には欠かせない「採用稟議書」の書き方と必要日数、決済が遅れる場合に想定されることなどを、10年以上採用を担当し、実際に稟議書を書いている、社会保険労務士資格を持つ大手企業の人事部管理が解説します。
最初に知っておきたい「採用稟議書」とは
まず日常的には聞きなれない「稟議」について解説します。
「稟議」とはある事案の担当者が決裁者の承認を得るために作成するもので、担当者から決裁者までの間に介する承認者が順番に承認し、最終的に決裁者が承認することで事案が承認されるプロセスです。
会社組織の上下関係が重んじられる日本企業特有の慣習で、会議を開く手間が省け情報共有が図れる反面、決済まで時間がかかるので、外資系などスピード感が重視される企業ではあまり採用されていません。
「稟議」が決済されれば事案は正式に決定され、関係者全員が承認したものとして扱われます。
「採用稟議書」とは、社員を採用する場合に作成され、人事部門の採用担当者が起案者で人事部門の担当役員もしくは社長が最終決裁者となっているケースが多いです。
議論を要することは稟議されないです
初めて「採用稟議書」を書くときの注意点と書き方
「採用稟議書」は採用活動を開始する時と内定者を決定する時、あわせて二回書きます。
「採用稟議書」は採用に関する情報を伝達して承認してもらうための書類なので、コミュニケーションの基本事項である「5W1H」を盛り込みます。
そしてできるだけ簡潔に書くことがポイントとなります。
採用稟議書と内定稟議書の書き方
【採用活動開始時】
1 稟議する事項(タイトル)「@@年度入社新卒(経験者)採用活動開始の件」
2 採用をする理由(欠員の補充か定期採用か)
3 採用活動の時期、入社予定日
4 配属場所(配属場所が決まっていれば、決まっていなければ未定でも可)
5 採用予定人数(少人数の場合は若干名でも可 過去5年の採用人数も併記)
5 応募要件(年齢、最終学歴、必要な資格 等)
6 採用活動に必要な経費(概算)
7 募集手段、選考方法(採用サイト、ダイレクトリクルーティング、面接や適性検査)
【内定者決定時】
1 稟議する事項(タイトル)「@@年@月入社社員内定の件」
2 内定者(名前 生年月日、年齢 最終学歴)
3 入社予定日
4 配属先
5 待遇(基本給、退職金等の基本事項)
6 契約期間(有期雇用か無期雇用か)
7 入社後の研修内容と期間
採用稟議書と内定稟議書が決済されるまでにかかる日数
稟議書が決済される日数は企業規模や企業慣習によって変わります。
自社で稟議が下りるまでに何人の承認が必要かを確認します。
承認者のスケジュールを確認し、長期出張があればその分決済まで時間がかかりますので、承認されるまでの日数を予想して採用稟議書を書きあげます。
もし短期間での決済が必要であれば事前に採用稟議があることを伝え、早めに承認・決済してくれるよう依頼しておきます。
採用稟議書は短期間で決済することが重要で、場合によっては担当者が承認者一人づつ持参して承認してもらうことも必要になることもあります。
新卒採用の場合では就活生は同時進行で複数社の採用を受けています。特に同業他社は採用スケジュールが近いので、内定までに時間がかかると他社に流れてしまうことがあります。
経験者(中途)採用の場合では新卒ほどは同時進行している企業は少ないですが、退職交渉の時間が必要なので最終選考から内定通知に時間がかかりすぎると他社への入社を決めてしまう可能性が高くなります。
決裁者含めた選考会議で内定者を決めて稟議は事後にすることもあります
採用稟議書の決済が遅い場合に考えられること
基本的に稟議書は詳しく議論する必要がない事案について承認を得るための決済方法です。
「採用活動開始時」の稟議書の場合は経営的な問題から採用活動自体を見送ることはありますが、「内定者決定時」の稟議書は、採用活動を開始することは承認されたうえで内定者を出そうとしているのですから、よほどのことがない限り承認されないことは考えにくいです。
では「内定者決定時」の稟議書の決済が遅れている場合に考えられることです
①予想外の事態がおきている
②最終決裁者が緊急的に不在となっている
①のケースは経営的に大きな問題が発生していたり、決裁者が内定予定者を問題視している場合です。これらの場合は採用自体が見送られる可能性があります。
②のケースは少し時間がかかるかもしれませんが予定通り採用されます。決裁者の病気や緊急出張の場合なので、業務に復帰するか代理者をたてて決済されることになります。
初めての「採用稟議書」の書き方まとめ
1 「採用稟議書」は採用活動開始時と内定者決定時に2種類
2 「採用稟議書」は承認者が多いと時間もかかるので余裕をもったスケジュールで
3 採用はスピード感が重要なので急ぐ場合は会議で承認を得て稟議は事後に
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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