「ポテンシャル採用」という言葉を耳にすることが増えていませんか?
潜在能力に着目した採用だと漠然とイメージすることはできますが、「ポテンシャル採用」の正確な意味やメリットとデメリットをしっかり理解できているでしょうか。
「ポテンシャル採用」は若年人口が減少して、若手社員の人材確保が難しくなる中で考え出された新しい採用方式です。
「ポテンシャル採用」を正しく運用することができれば、人材確保や社内活性化につながり会社組織を強くしていくことが可能です。
この記事では「ポテンシャル採用」をはじめて導入する場合に、今更聞けない「ポテンシャル採用」の意味とメリット・デメリット、実施する場合の注意点を、10年以上新卒採用と経験者(中途)採用を担当し、ここ数年は実際に「ポテンシャル採用」も実施している社会保険労務士資格を持つ大手企業の人事部が解説します。
わかっているようで難しい「ポテンシャル採用」の意味と使い方
「ポテンシャル採用」は近年導入する企業が増えている採用手法の一つです。
スキルや資格、経験などではなく人柄、性格、素養などの潜在的な資質・能力で評価するのが「ポテンシャル採用」です。
主なターゲットは転職者や既卒ですが、これまでの「経験者(中途)採用」と違うことは「経験者(中途)採用」は即戦力として期待されスキルや業務経験などを評価軸としていますが、「ポテンシャル採用」は業務適性の有無、企業カルチャーにフィットするかといったその人が本来持っている資質を問う採用です。
「ポテンシャル採用」では経験は不問で、中長期的に活躍が見込まれる人材を求めていて、年齢は30歳くらいまでで「第二新卒」採用よりも少しターゲット年齢が上になります。
「新卒採用」との違いはビジネスマナーなどの社会人としての基礎を学んでいる前提で、即戦力ではないけども明日にでも配属して仕事に就ける点が異なります。
「経験者(中途)採用」よりは業務研修が必要となりますが、直接的な業務経験は問わないため語学力や海外経験、他業種での経験など多彩な人材が採用できるチャンスとなります。
「ポテンシャル採用」の使い方
「ポテンシャル採用」の使い方としては、経験こそないけども潜在的な能力は高く、カルチャーフィットも期待できて将来的な幹部候補を採用する場合や、労働市場に埋もれている海外大学卒業者などの有能な若手人材の確保に有効は手段となります。
「ポテンシャル採用」で応募してくる人材は就業した経験があり、会社や仕事を知ったうえで自分の適性ややりたいことを見つめ直し、主体的に行動できる人材が獲得できるので、厳しさを増す採用環境の中で、新たな採用手法として定着しつつあります。
「ポテンシャル採用」のメリット
導入例が増えている「ポテンシャル採用」のメリットを解説します。
主体的で多彩な人材の採用
「ポテンシャル採用」は経験やスキルを求めていないので、新卒と同様に幅広い層からの応募が期待できます。
具体的には新卒採用スケジュールに合わなかった海外大学の留学生や卒業生、新卒後海外企業で就労したり海外でNGOなどの活動をしていたり、起業経験者などです。
また、新卒採用後に自分の適性や就労経験から「自分の適性や目指すキャリアが描けた」「もっとステップアップしていきたい」として主体的にキャリアパスを構築しようとする人材などもターゲットになります。
経験不問だからこそこれまで応募がなかったような人材に出会えるチャンスです
ビジネスマナーの基本を備えた人材の獲得
既に就業経験があるため、社会人としてのビジネスマナーやコミュニケーションスキルが備わっている人材を採用できることが多いです。
このため入社後のビジネスマナー研修などは必要なくなり、研修工数を減らすことができます。
経験者(中途)採用より戦力化までの時間はかかりますが、新卒採用よりは早期に一線に配属することができます。
ビジネスマナーチェックは必要になります
世代交代が進み将来の幹部候補の確保
「ポテンシャル採用」は主に20代の第二新卒かやや上の年代がターゲットとなりますので、20代社員が入社することで社内の世代交代を進めることができます。
中高齢層よりは世の中のトレンドに敏感な世代で時流に合った発想も見込めるのでビジネスチャンスが広がることも期待できます。
また人材の将来性やポテンシャルを重視した採用手法であるため、入社後に企業文化や風土に浸透させながら、将来の幹部候補として育てていけるというメリットがあります。
「ポテンシャル採用」のデメリット
「ポテンシャル採用」にはメリットも多い反面デメリットも理解する必要があります。
中途採用と比較して研修コストがかかる
「ポテンシャル採用」は経験者(中途)採用に比べると、育成コストがかかりやすいです。
経験者よりも未経験者が集まりやすいので、新卒採用と同様にスキルや知識を教育しなければいけないので、一定程度研修にコストをかける必要があります。
スキル教育は時間をかける必要があります
入社後のミスマッチが生じる
企業と求職者の間でミスマッチが起こる可能性は十分にあり得ます。
「ポテンシャル採用」では人柄や性格といった抽象的な要素が評価の中心になります。
面接で得られる情報は限定的で、その人の「本質」を見抜くことは容易ではありません。
求職者側からしても企業風土やカルチャーなどをよく理解しないまま入社することもあり、「思っていた仕事や会社ではなかった」と感じることがあり得ます。
早期離職が予想される
転職を経験している若手の人材は、新卒に比べて転職に対する抵抗が少ない場合があります。
転職のハードルが極端に低い気質が考えられ、「この会社は合わない」と早期に見切りをつけてしまうことがあります。
また「同期」がいないこともあり、孤独を感じたり、年下の先輩から指導を受けることもあり居心地の悪さを感じて離職を考えてしまうこともあります。
「離職ぐせ」の見極めは重要です
期待通りの人材に成長しない
「ポテンシャル採用」は投資のような一面があります。
「この人材こそ将来の幹部候補だ」と確保した人材が、必ずしも期待通りの人材に成長するとは限りません。
短い期間の選考ではその人の「ポテンシャル」を完全に見極めるのは困難です。
会社のエース社員になる可能性もあれば、スキルや経験もなく活躍も見込まれない社員と化すリスクもあります。
ポテンシャル採用で必要な適性検査とリファレンスチェック
「ポテンシャル採用」を行う上で、採用担当者は『求職者の潜在能力』を見抜く必要があります。しかし、短時間の面接やエントリーシートで応募者の本質を見抜くのは難しいです。
以下の3つの手法で「ポテンシャル採用」を成功させましょう。
ポテンシャル採用を成功させるポイント① 適性検査を活用
「ポテンシャル採用」では気質や基礎的な学力や論理的思考能力を判定する適性検査を活用しましょう。
「SPI」や「玉手箱」「compass」「tanΘ(タンジェント)」などの適性検査は、科学的根拠に基づいた性格や思考力が判断されるので、応募者のポテンシャルを評価するうえで有効です。
印象やイメージだけではなく科学的裏付けも必要です
ポテンシャル採用を成功させるポイント② リファレンスチェック
リファレンスチェックとは、前職での仕事ぶりや成果、実績、人間関係などを第三者(前職の上司や同僚など)に照会し、面接での回答やエントリーの記載事項と違いがないか、前職での人物評価を確認することです。
リファレンスチェックは自社で行うこともできますが、取材やインタビューの経験がなければ、必要な情報を聞き出すのは難しいです。
「back check」 などのオンラインサービスを利用して、求職者の本質を判断する材料を増やして、ミスマッチのリスクを下げることができます。
ポテンシャル採用を成功させるポイント③ 求人情報を充実させる
求職者はスマホやタブレットを使って仕事を探すのが当たり前となっています。
求人サイトや自社の採用HPに掲載する求人情報を充実させ、できるだけ求職者の目に留まるように情報発信を強化します。
「ポテンシャル採用」の場合、就いてもらう仕事内容だけでなく、企業カルチャーや社風、活躍している社員像、入社後の研修や福利厚生、時間外労働や休日労働の有無など、入社後の仕事ぶりがイメージできる情報を発信し、求職者に形成される自社のイメージと実像が違わないようにすることが重要です。
「ポテンシャル採用」でミスマッチを防ぐためには、採用前に自社が求める人物像を明確にすること、そして転職回数とそれぞれの転職理由が納得のいくものなのかを確認し求職者の本質を見抜くスキルが重要です。
また入社後はポテンシャル採用された人が長く働けるよう、研修を充実させたりメンター制度を導入するなど受け入れ環境を整えることも大切です。
自社のことを正しく理解してもらえればミスマッチも減ります
ポテンシャル採用を成功させるポイント④ グループワークを導入する
面接で見抜きにくい集団の中での振舞や、課題への取り組み方は「ポテンシャル採用」では重要な評価軸となります。
面接では好印象でも集団になると埋没したり、うまくコミュニケーションが取れないなどの姿が浮き彫りになることもあり、筆者の会社のポテンシャル採用では欠かせない選考メニューとなっています。
関連情報
ポテンシャル採用をしている大手企業 ヤフー、サイボウズ
ヤフー | 新卒一括採用を廃止し経験や経歴不問で30歳以下は応募可能 | https://about.yahoo.co.jp/hr/potential/ |
サイボウズ | 就業経験1年以上でキャリア採用の要件い合わない人材を職種ごとに募集 | https://cybozu.co.jp/recruit/entry/potential/ |
コロプラ | 年齢・経験は不問で職種ごとに募集 | https://colopl.co.jp/recruit/requirements/graduate/ |
はじめての「ポテンシャル採用」まとめ
1 ポテンシャル採用は若手人材確保や社内活性化に有効
2 ミスマッチも起こりやすく採用手法や事前広報が大切
3 適性検査を実施しリファレンスチェックでミスマッチリスクは減らせる
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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