採用活動では「同意書」をとる必要がある場面があります。
「同意書」をとる代表的な状況は内定を出して入社に同意した際に書いてもらう時です。
この「同意書」との同意が意味するものと効力の範囲は明確に理解する必要があります。
一方で同じ状況で「内定承諾書」を書いてもらうケースもあります。
「同意書」と「内定承諾書」の違いは何なのでしょうか?
そしてここ数年の採用活動では「同意書」が必要な新しい状況も生まれつつあります。
この記事では「同意書」の意味と使い方、「内定承諾書」との違い、新たな「同意書」が求められ状況について、10年以上新卒採用と経験者(中途)採用を担当している、社会保険労務士資格を持つ大手企業の人事部管理職が解説します。
採用活動で必要になる「同意書」とは
採用活動で必要になる「同意書」で代表的な使われ方は内定に対して「同意」する場合です。
「同意書」の意味は「同意」することを表明した書類です。
発生する効力としては「内定」に対して「同意」することなので、入社する意思があることを書面で正式に伝えることになります。
内定は「解約権留保付労働契約」という労働契約が成立した状態です。
企業が内定を通知し、応募者が「同意書」を提出したら「解約権留保付労働契約」が成立し、解雇には一定の制限がかかることになります。
「同意書」と「内定承諾書」の違い
「同意書」と似た書類に「内定承諾書」があります。
これらの意味はかなり近しいのですが、厳密には若干の違いがあります。
「同意書」は内定に「同意し賛成」するのに対し、「内定承諾書」は企業の内定の通知に対し「内定を承諾し引く受ける」意思を表明しています。
内定や入社に際して提出する書類は「内定承諾書」「入社承諾書」と呼ばれます。
「同意書」も「内定承諾書」も内定の際に使うことはできますが、内定に対して賛成するというよりも、引き受ける(受け入れる)という意味も含んだ「内定承諾書」のほうが適当です。
内定に対して同意書を求める企業も減っていて、ほとんどが内定承諾書になっています。
採用活動で「同意書」のもうひとつの使い方「個人情報同意書」
内定を出す段階以外でも「同意書」が使われることが増えています。
それは採用活動で「個人情報」を取得する際です。
採用活動で取得する「個人情報」はエントリー段階で提出してもらう「エントリーシート」や「職務経歴書」「履歴書」や大学に発行してもらう「成績証明書」などがあります。
選考プロセスが進むにつれて「面接の評価シート」や「適性検査結果」「筆記試験の結果」などの個人情報も集まります。
これらの個人情報はあらかじめ利用目的を応募者に明示しなければなりません。
採用HPや募集要項のどこかに以下の文言を加えておきましょう。
個人情報取得の例文
記載いただいた個人情報や採用活動中に取得した個人情報は、採用の採否の決定や採用後の教育及び配属先の決定等の人事資料に利用します。不採用者の取得した個人情報は、採否の決定後、破棄・削除いたします。
個人情報を取得する際には、利用目的を明示したうえで個人情報取得に対して「同意書」を書いてもらいましょう。
取得目的を明示し、特段反応がないので同意されたものという扱いをしている企業が多いのですが、後々のトラブルを回避するために「同意書」を書いてもらうことを勧めます。
同意書は面接会場などでその場で記入してもらって回収し、ほかの個人情報と一緒に保管しておきましょう。
個人情報は管理も大切です。
同意書や内定承諾書の提出後の流れ
内定段階で「同意書」や「内定承諾書」を提出した後の流れです。
企業は内定を出す応募者に「内定通知書」を発行し、「内定」したことを伝えます。
応募者は「同意書」や「内定承諾書」に記入して提出します。
この段階で「解約権留保付労働契約」が成立することになります。
「解約権留保付労働契約」が成立すると、内定者が学校を卒業できなかった場合や採用段階で重大な経歴を詐称していた場合など、採用段階ではわからなかったことや防げなかった事態にしか内定を取消すことはできなくなります。
「同意書」や「内定承諾書」を提出したら内定者側にも一定の責任が生じます。
内定後は入社に向けて企業側も研修を組んだり人員計画を立てますので、応募者が安易に内定を辞退すると、企業側から損害賠償を求められる可能性もあります。
内定承諾書を受け取ってからの作業です
①入社日を決める
②正式に雇用契約を結ぶ
③研修スケジュールを組んで受け入れ部署を決める
④社会保険や労働保険の手続きを進める
⑤経験者(中途)採用の場合は現職の退職手続きをフォローする。自社の企業年金が企業型確定拠出年金で、内定者が個人型や企業型の確定拠出年金の加入者であれば資産移管手続きを進める
内定承諾書提出後に就活続けるケース
新卒採用の場合、内定承諾書を提出した後も就活を続けるケースがまれにあります。
企業側が通年採用をするようになっており、学生も内定を確保しておきながらも本命企業が夏採用や秋採用を実施していないか情報を集めています。
内定承諾書の提出で一定の法的効力は発生しますが、学生が内定を辞退してきた場合は引き止めることは困難ですし、仮に引き止めが成功しても低いモチベーションで入社しては早期離職する可能性は高いので、よほどの人材でない限り無理な引き止めはお互いに不幸な結果となります。
学生は年々ドライになっていますので、去るものは追わずに次年度の採用にエネルギーをかけたほうがいいです
採用活動で必要な「同意書」の意味と使い方 まとめ
1 内定段階の同意書は内定承諾書とほぼ同じ意味
2 同意書は個人情報取得でも使われるようになっている
3 同意書を出すと一定の労働契約が成立した状態になる
最後まで読んでいただきありがとうございます。
コメント