いまや働く上で重要なキーワードとなっているのが「ワークライフバランス」です。
厚生労働省が定める「ワークライフバランス」の定義は仕事と生活の調和ですが、自分が送りたい生活とそれを担保する仕事がバランスよく保たれている働き方、というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
10年以上新卒採用や経験者採用(中途採用)をしていますが、就活生や転職希望者から待遇や有給休暇取得日数などの質問を受けることが多くなってきており、就職先や転職先を選ぶ際にワークライフバランスを重視することを躊躇なく話すのを目にするようになっています。
このように臆することなくワークライフバランスを重視する就活生や転職希望者が増え、ワークライフバランスが取れていない企業だと人が集まりにくくなっている現実があります。
ワークライフバランスがとれる就職先や転職先をみつけようと思っても、実際に何を調べればワークライフバランスがとれる企業や業界が見つかるのかが分からないこともあると思います。
この記事では、ワークライフバランスがとれている就職先や転職先を見つけるための求人票の読み取り方を、10年以上新卒や経験者採用を担当している社会保険労務士資格を持つ大手企業の現役人事部管理職が解説します。
ワークライフバランスがとれている業界とは
ワークライフバランスがとれているかどうかの基準は人により様々です。
時間外労働時間や休日日数を重視する人もいれば、自己研鑽のための学習支援や育児休業などの福利厚生制度の充実を重んじる人もいます。
一般的には時間外労働時間が少なければ健康維持がしやすくなりますし、休日日数が増えれば家族と過ごす時間や趣味に費やす時間が増えますので、ワークライフバランスがとれていることの指標になります。
時間外労働が少ない職種ランキング
DODAが発表した残業時間の少ない職種ランキングを紹介します。
順位 | 職種 |
1 | IT/通信業界の営業 |
2 | 金融業界の法人営業 |
3 | 金融業界の個人向け営業 |
4 | 金融業界の代理店営業 |
5 | MR |
6 | 旅行業界の営業 |
7 | 流通/外食業界の営業 |
8 | 化学系の営業 |
9 | 医療機器メーカーの営業 |
10 | 総合商社の営業 |
時間外労働が少ない職種のランキングを分析するとIT業界や金融業界、医療業界の営業職が上位を占めているのがわかります。
これらの営業職は主に法人が顧客でアポイントをとって商談をすすめます。
コロナ禍でWEB営業も普及したことからスケジュール管理をしやすくなり、急な顧客対応も少ないので時間外労働が抑制されます。
比較的ワークライフバランスがとれている業界としては、大きくわけてIT業界、金融業界、医療業界の営業職ということになります。
その中でも法人営業を中心とした業界の職種が時間外労働が短く、ワークライフバランスがとれているといえます。
ワークライフバランスの基本は仕事以外の時間を確保できることです
ワークライフバランスがとれているか、求人票から見抜く方法
ワークライフバランスがとれているかを見抜くには求人票にヒントが隠されています。
法律で求人票に記載しなければならないことは決められていますが、義務付けられている項目だけでなくワークライフバランス関連の情報が書かれているかがポイントになります。
時間外労働時間の明示
法律では求人票に時間外労働の有無の記載が義務付けられています。
しかし、時間外労働時間がどのくらいあるのかは記載する義務はありません。
このため時間外労働が何時間あるのかわかりにくくなっています。
ワークライフバランスがとれている企業は時間外労働の有無だけでなく平均時間まで明示しています。
注意が必要なのは、時間外労働の平均時間の記載はなく賃金項目に「固定残業代20時間分支給」とあったため、残業は月平均が20時間程度と考えていたら50時間だったというケースもあります。
時間外労働はとても重要、時間数があいまいな場合は要注意です
労働保険や社会保険の加入状況
福利厚生制度については、求人票に労働保険や社会保険の加入状況の記載が義務付けられています。
厚生年金保険、健康保険、雇用保険、労災保険加入は当たり前で、これらの社会保険や労働保険に加入していない企業はワークライフバランスがとれている企業とは言えません。
男性の育児休業の取得率
育児休業取得率は求人票への記載が義務付けられていませんが、ワークライフバランスがとれている企業の基準として育児休業の取得率は重要で、育児休業取得率を求人票に明示してあり、日本全体の平均を上回っている企業はワークライフバランスの推進に積極的だといえます。
育児休業取得率が記載されていない場合は、採用担当者に聞いてみましょう。
厚生労働省が発表した2021年度の男女別育児休業取得率を下回る企業は社風として育児休業の取得がしにくい企業といえます。
女性 85.1
男性 13.9
女性はほぼ100%に近く、男性の育児休業取得率も高い企業はワークライフバランスを重視している企業といえます。
男性の育児休業取得率は企業の考え方を反映しています
有給休暇取得日数
法律で年間5日の有給休暇取得が義務付けられています。
有給休暇取得日数が5日未満であれば法律に違反していますし、5日以上で何日取得しているかがポイントです。
厚生労働省が発表した令和3年「就労条件総合調査」によると、有給休暇の平均取得日数は10.1日となっています。
福利厚生制度
福利厚生制度は求人票への記載が義務付けられていません。
福利厚生制度の記載がないからといって福利厚生制度がない訳ではありませんが、記載されている場合は企業は自社の福利厚生制度が業界や地域の平均以上に制度が整っていると考えています。
まずは住宅手当や家族手当などの諸手当を確認します。
休日制度も重要です。
最近では配偶者の出産時に取得できる休暇や、子育てに使える休暇、介護や看護に取得できる休暇などの制度を整備している企業も増えています。
ワークライフバランスを重視し社員のニーズにあった制度を設けようとしている企業が導入しているのが「カフェテリアプラン」です。
ワークライフバランスのとれた暮らしを送るうえで、何を重視するかは人それぞれで、社員全てのニーズを満たす制度を設けるのは困難です。
「カフェテリアプラン」は社員は与えられたポイントの範囲内で自由に福利厚生メニューを選ぶことができるので、幅広いニーズに応えることができます。
自己啓発のための学習支援や旅行などの余暇への費用補助、ベビーシッターの費用補助や医療費補助など様々なメニューが用意されています。
「カフェテリアプラン」が設けられている企業は「ワークライフバランス」への取り組みが進んでいる企業といえます。
カフェテリアプランを導入する企業が増えています
ワークライフバランスがとれた転職先を見抜く方法 まとめ
1 時間外労働や休日労働時間は重要
2 育児休業の取得率は企業の姿勢を反映
3 多用なニーズに応えるカフェテリアプランはワークライフバランスに有効
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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