内定を出したい人にどのようなバックグランドがあるのか、安心して内定を出すためには解決しておきたい疑問です。
調べたいのだけど果たして調査は許されるのか、許されるとしてもどこまでが可能なのか、ほかの企業の人事はどこまで身元調査や身辺調査をしているのか、人事担当者にとっては大っぴらに聞けない疑問です。
身辺調査や身元調査は応募者の人権にも関わる機微な内容ですし、法律にも抵触する可能性があります。
この記事では人事担当者が悩む身辺調査と身元調査について、社会保険労務士資格を持つ大手企業の現役人事部管理職が実践に基づいた方法を解説します。
新卒採用・転職で知っておきたい身辺調査と身元調査,素行調査
身辺調査と身元調査、素行調査は似ていますが厳密には違うものです。
身辺調査と身元調査では調査範囲が違います。
身元調査は対象者の出自の調査となります。
一方身辺調査は身元調査の調査範囲に加えて、生育環境や現在の住環境や就業環境、交友関係も含めた調査になります。
素行調査は主に私生活面での調査となりますので身辺調査の一部となります。
新卒採用・転職の身辺調査と身元調査、素行調査は合法か違法か
採用時に身辺調査や身元調査、素行調査をすることは違法ではありません。
ただし厚生労働省は公正な採用選考を行うため採用選考時に配慮すべき事項として以下を挙げています。
・身辺調査・身元調査などの実施
・本籍・出生地、家族構成、住宅状況、生活環境・家庭環境
・宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想信条、
労働組合の加入状況や活動状況・学生運動、購買新聞・雑誌・愛読書
身辺調査・身元調査、素行調査自体は違法ではありませんが、取得した情報の内容や調査方法、情報の取得方法に違法性があれば問題となります。
身辺調査や身元調査、素行調査で知りたいことは個人情報になります。
個人情報保護法では本人の同意なしに個人情報を取得したり提供することはできません。
本人の同意なしにこれらの情報を集めることは違法になります。
新卒採用・転職の身辺調査と身元調査、素行調査はどこまで許される?
身辺調査と身元調査、素行調査は本人の同意が大前提です。
応募者の身辺調査や身元調査、素行調査は、本人に通知し同意を得ていれば違法にはなりません。また、身辺調査や身元調査、素行調査の利用目的を伝え、目的以外に使用しないことや調査結果の事実を伝えることを条件とした場合も違法にはなりません。
しかし、個人情報保護法の中でも、特に慎重に扱うべき「要配慮個人情報」には注意が必要です。
要配慮個人情報とは人種や信条、社会的身分、病歴や犯罪、犯罪の被害者となった事実のほか、身体や知的または精神障害があること、健康診断やその結果など医療に関する情報などを指します。
これらの要配慮個人情報を取得する際は、本人へ通知した上で同意を得ることが必要です。また、要配慮個人情報の利用目的を伝え、目的以外に使用しないことが条件になります。
本人の同意が大前提です
新卒採用・転職の身辺調査や身元調査、素行調査 人事はどこまで調べる?
実際のところ人事はどこまで身辺調査や身元調査、素行調査をしているでしょうか。
金融機関や大手企業、有名企業では興信所や調査会社に依頼して身辺調査や身元調査、素行調査を行っているところが多いです。
自社でこれらの調査を行う場合は時間や労力がかかります。
また社員は素人なのでどこまでが合法的に許されるのかが不安であり、違法になるかもしれない不安を抱えて調査を行うよりも、費用はかかりますが探偵や興信所に頼むことで不要なリスクを回避できます。
興信所や調査会社が調査を行うことは違法ではありません。
警察庁は個人情報保護法の施行に当たり、「興信所業者が講ずべき個人情報保護のための措置の特例に関する指針」という通達を出しています。
そのため興信所業者は、社会的差別につながるおそのある「要配慮個人情報」については取り扱いませんが、中途採用者の身辺調査や素行調査に関しては、対象者に通知しなくても調査が可能です。
身元調査や身辺調査、素行調査される職業 公務員はどうなる?
まず公務員で特に公安関係の職種では身辺調査されていると考えたほうがいいでしょう。
また宮内庁関係も身辺調査はされているといわれています。
では民間企業ではどうでしょうか?
調査をしている業種や職種を特定できないのが実情ですが、金融系はある程度調査されていると思って間違いないでしょう。特に金融系の転職では厳しく調査されていると思われます。
また秘書部門や外部からのハイクラス転職の場合もほぼ間違いなく調査されているといえます。
SNSなどの発信状況をチェックすることもあります
身元調査や身辺調査、素行調査で内定取り消しは許されるか
身元調査や身辺調査、素行調査の結果をもって内定取り消しをすることは困難です。
なぜなら、厚生労働省は能力や適性以外での理由で採用差別をすることを禁じているからです。
例えば金融機関の採用で過去に窃盗や詐欺などの有罪判決を受けていたことなどを隠して入社しようとした場合でも、身元調査や身辺調査や素行調査をすることに本人の同意を得ていない場合、調査そのものが違法になる可能性があり、違法に知り得た情報をもって内定取り消しをすることがはできません。
ただし内定を出す前の段階であれば、面接や適性検査の結果をもって内定を出さないことは可能です。
身辺調査や身元調査、素行調査をする場合は内定を出す前に、面接や適性検査など身辺調査や身元調査、素行調査の結果以外の評価を総合して内定判断をするほうがいいでしょう。
新卒採用・転職の身辺調査や身元調査 まとめ
1 身辺調査や身元調査、素行調査そのものは違法でない
2 対象者の同意が必要
3 興信所や調査会社の場合は同意なしにも可能
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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