募集をかけても応募者が集まらない、内定を出しても辞退が相次ぐ、せっかく入社しても定着しない・・
中小企業の採用担当者が抱える悩みのひとつではないでしょうか。
中小企業だから人が集まらない、採用活動に予算をかけられない、などなど中小企業は採用でビハインドを背負っているケースが多いのですが、一方で知名度が低く多額の採用予算を投じていなくても応募者が集まり高い定着率を誇る中小企業もあります。
どこに違いがあるのでしょうか?
この記事では採用活動に悩む中小企業の採用担当者向けに、なぜ中小企業の採用が苦戦するのか、採用活動が改善した中小企業の成功事例と、中小企業採用のコツを10年以上採用を担当している社会保険労務士資格を持つ現役人事部管理職が分かりやすく解説します。
苦戦する中小企業の採用 その理由
労働人口が減って近年は売り手市場といわれていますが、実は大企業と中小企業では事情がかわってきます。
中小企業への就職希望者は奪い合い
これは2023年の大卒の求人倍率の推移です。 引用 第39回 ワークス大卒求人倍率調査(2023年卒)
就職希望の大学生一人に対して1.58件の求人があります。
一方で企業規模別の求人倍率です。
従業員数が5000人以上の大企業の就職を希望する大卒者には1人に0.37件の求人しかありませんが、300人未満の中小企業は5.31件となっています。
2010年以降、中小企業の求人は常に3倍以上となっていて「超売り手市場」といえます。
就職希望の大学生の意識として大企業の人気が高く中小企業を希望する大学生は極端に少ないのが実態です。
中小企業採用の課題
1 採用コストがかけられない
マイナビの「新卒採用の予算について調査結果」によると2019年新卒における上場企業の採用予算は1237万、非上場企業は372万と大きな差が生じています。
投じられる予算が違うので中小企業は大企業と違う独自の手法が求められます。
2 母集団がつくれない
採用予算で大きく差がついているので、同じ採用サイトを使っても大企業はオプションサービスを多数利用して、露出を高くすることができますが、予算が限られる中小企業は多くの企業の中に埋没してしまいがちです。
知名度が低いと母集団は少なくなってしまうので母集団に頼らない採用戦略か、ユニークな施策で知名度を上げる必要があります。
3 内定辞退が多い
中小企業の内定辞退の理由は6~9月とそれ以外の時期では異なります。
6~9月は大企業の内定を得た就活生が「滑り止め」としてキープしていた中小企業の内定を辞退します。
それ以外の時期、特に内定式後は内定者とのコミュニケーションに問題があります。
接触が多すぎても煙たがられますし、少ないと「放っておかれている」と疎外感を抱かれてしまいますので適切な間合いでの内定式後のフォロー方法を検討する必要があります。
4 採用専任のスタッフを確保できない
中小企業では採用専任スタッフを確保するのが難しい場合があります。
もともと中小企業の社員数は大手企業よりも少ないので、総務部で人事、労務、採用、総務、庶務・・などなど様々な仕事をしている場合があります。
採用はタイミングとスピーディーなレスポンスが必要なので、採用担当者が様々な仕事を抱えていると機会を失っている可能性があるので採用業務を一部外注するなど、柔軟な対応が必要かもしれません。
中小企業採用のヒントとなる成功事例
中小企業でも大手並みの採用充足率を誇り、採用活動で成果を上げている企業はたくさんあります。
中小企業の採用のヒントとなる事例を紹介します。
成功事例① チームラボ株式会社「卒制、卒論採用」
チームラボ株式会社は、デジタルテクノロジーを活用したデジタルコンテンツ制作や都市計画などを行う企業です。
新卒採用で導入している「卒制・卒論採用」は、卒業制作や卒論の制作物や成果で選考しています。
就職活動よりも大学での卒制や卒論に力を注いだ学生を評価するもので、クリエイトで能力を発揮できる人材を見極めるために、制作物で評価するというのは合理的な採用手法です。
新卒採用 – 新卒採用 – Recruit | チームラボ/teamLab (team-lab.com)
成功事例② 株式会社カヤック 面白法人の「いちゲー採用」
「面白法人」と名乗る株式会社カヤックは、アイディアを活かしたWebプロモーションやゲーム・エンタメ事業などを広く手掛ける会社です。
新卒採用は通常の採用フローとは別に、常にユニークな採用方法を実施していることでも知られています。
なかでも、「経歴詐称エントリー(エイプリル採用)」は2013~16年の4月1日限定で実施されたユニークな採用企画です。嘘の履歴書をツイートするだけで書類選考にエントリーできるというもので、累計3,000名以上の応募者を獲得しました。
2017年3月からはゲームの経験や情熱で選考を行う「いちゲー採用」も開始。ゲーム関係メディアから取り上げられるほど話題になっています。
成功事例③ 株式会社飛和興行 業界では異色の詳細な仕事情報発信
道路や河川などの清掃を請け負う株式会社飛和興行です。
飛和興行の採用の課題は人材が定着しない早期離職で、多くの中小企業が抱える悩みのひとつです。
早期離職の原因が入社前のイメージと実際に働く姿との間にギャップが生じやすいことにありました。
業界でも詳しく仕事内容を開示する風潮がなかったため、自社ホームページもなかったそうです。
入社前と入社後の認識の相違をいかに減らすか?
この課題を解決するため、業界の風潮に逆らって求人で詳細な仕事内容を正直に開示し、さらに面接時に動画を使って仕事への理解を深めました。
その結果、選考中の辞退者が減少し、年間の採用数も3名から10名に増え、定着率も向上しているそうです。
https://employment.en-japan.com/html/topics/award2019/detail/desc2/
中小企業の成功する採用戦略
まず欲しい人材のターゲットを定めます。
これは採用で求める人物像であり「ペルソナ」といわれています。
大事なのは万能型の人材だけでなく「この仕事ができる人」としてスキルや人柄を細かく定めたターゲットを設定します。
また東京や大阪などの大都市圏の就活生は大企業志向が強いのですが、地方では大手志向は弱まります。地方都市にも目を向けることも必要です。
つぎは母集団形成へのこだわりをやめます。
採用数が10人の企業で、多大な労力とコストをつかって母集団が1000人できたとしても、990人は落としてしまっていのです。
これは人を採用しているのではなく落としている作業なのではないでしょうか。
自社のことをよく理解して「本当にここで働きたい」と思ってくれる人が10人集まって、その10人を採用したら入社後の定着率もあがりモチベーションも向上します。
母集団にこだわらないのであれば、選ぶ採用ツールもかわります。
総合的な就活サイトではなく、エージェントやダイレクトリクルーティング、SNS展開などなど選択肢は変わってきます。
最後は選択と集中です
社内で採用に関われる社員数は限られているので、煩雑な作業の全てを社員が担うとどうしてもタイムリーな作業ができなくなります。
外注できる作業は外注化して、社員がすべき面接や採用判断などに集中しましょう。
大企業と同じ土俵ではなく得意なフィールドで戦いましょう
中小企業の新卒採用と中途採用の人材の探し方
これは大卒就活生の企業志向です。
中小企業の求人倍率は大手企業よりも厳しいとお伝えしましたが、一方で44.9%の就活生が「やりがいのある仕事であれば中堅や中小企業でもよい」と考えています。
つまり、仕事内容や企業の強みや魅力を伝えることができれば中小企業を選択する就活生は半数近くいるのです。
こうした傾向を踏まえた中小企業の新卒採用の人材の探し方ですが、①ターゲット層への認知度を上げる②ターゲット層へ直接アプローチ③仕事内容を詳細に伝える④求めるスキルに応じた方法で選考する
中小企業の中途採用はリファラル採用も有効
中途採用であれば、新卒採用の人材の探し方に加えてリファラル採用があります。
リファラル採用は自社で働いている社員に人材を紹介してもらう手法です。
社員による紹介なので活躍できそうな人材に自社の強みや課題を説明するので、ミスマッチは少なくなります。
友人を紹介して不採用になったら気まずい、そんな心理的なハードルを下げるために、紹介した知り合いが不採用となったら会社負担で食事代を支出するという施策をとっている中小企業もあります。
「不採用でも食事が食べられるから受けてみない?」と気軽に紹介できます。
苦戦する中小企業の採用 まとめ
1 中小企業採用は空前の売り手市場
2 ターゲットを明確かつ具体的に定め、大企業とは別の採用マーケットに参入
3 仕事内容を詳しく紹介し、求める人物像にあった採用方法で大企業と差別化を図る
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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