労働条件には必ず明示しなければならないことと定めている場合は明示しなければなりません。
必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」を伝えなかった場合は違法となります。
定めている場合は通知しなければならない「相対的明示事項」は定めている場合に明示するのですが、定めていなければ明示する必要はなく、採用にあたって必ず定めなければならない訳ではありません。
このように採用にあたって労働条件を定め通知するにはいくつかのルールがあります。
こうしたルールを正しく理解するため必要なことをまとめました。
この記事は採用するときに忘れてはいけないことの一つである労働条件を通知することについて、10年以上新卒採用と中途採用を担当している社会保険労務士資格を持つ大手企業の人事部管理職が解説しています。
労働条件を明示するには「労働条件通知書」を提示する
労働条件を通知するための書類に「労働条件通知書」があります。
「労働条件通知書」は労働条件を通知するためのもので、会社側から一方的に労働条件をまとめて提示します。
労働条件をまとめた書類には「労働契約書」もあります。
「労働契約書」は会社側と労働者が労働条件について合意すると効力が発生します。
「労働条件通知書」と「雇用契約書」の違いですが書いてある内容はほとんど変わりません。
法律上、「労働条件通知書」と「雇用契約書」の作成は義務づけられておらず、労働条件を明示し会社側と労働者が同意すれば雇用契約は成立します。
しかし、口頭での明示だけでは「言った」「言わない」のトラブルが発生しがちですので、書面としてまとめたのが「労働条件通知書」です。
さらに会社側と労働者側が労働条件に合意した証となるのが「雇用契約書」になります。
「雇用契約書」は「労働条件通知書」を兼ねることができますので、雇用契約を結ぶ際は「雇用契約書兼労働条件通知書」とするケースが多いです。
厚生労働省が定める「絶対的明示事項」と「相対的明示事項」
明示しなければならない労働条件は厚生労働省が定めています。
労働条件には、必ず明示しなければならないもの(絶対的明示事項)と、企業側が定めている場合に明示すれば足りるもの(相対的明示事項)の2種類があります。
また、絶対的明示事項のうち昇給以外の事項については書面による明示が必要となります。
絶対的明示事項 | 相対的明示事項 |
---|---|
1. 労働契約の期間に関すること ・期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること ・就業の場所や従事すべき業務に関すること 2. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関すること 3. 賃金(退職手当、賞与などを除く)の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関すること 4. 退職に関すること(解雇の事由を含みます) 5. 昇給に関すること ※1~4は書面による明示が必要 | 6. 退職手当を受けられる労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関すること 7. 臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金額などに関すること 8. 労働者の負担となる食費、作業用品などに関すること 9. 安全・衛生に関すること 10. 職業訓練に関すること 11. 災害補償・業務外の傷病扶助に関すること 12. 表彰・制裁に関すること 13. 休職に関すること |
昇給は書面でなくてもOK
退職金は定めていなければ明示しなくてもいいです
【パート労働者の場合】
パート労働者の場合、文書等により明示すべき事項として、上記の規制に加えて、昇給、退職手当、賞与の有無が義務付けられています。
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労働条件通知書は必要な要件がそろっていれば、法律上は特に書式は定められていません。
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採用で労働条件はいつまでに明示するのか?
労働条件を明示するときは労働者を採用するときです。
もっと具体的に説明すると労働契約を締結するときです。
労働条件は労働契約の内容そのもの
内容がわからなくて契約を結んではいけないということですね
労働条件の明示は口頭やメールやSNSでも可能か?
労働条件の明示は書面に限らず口頭でも許される場合があります。
「絶対的明示事項」の昇給に関する事項と「相対的明示事項」は口頭でも構いません。
また対面でなくてもFAXやEメール、SNSでも明示することができます。
これまでは労働条件の明示は、書面の交付に限定されていました。しかし、社会はデジタルシフトしており
採用の場も例外ではありません。
デジタルシフト、ペーパーレス化に対応するため、労基法規則が改正され、2019年4月1日からメール、FAX、SNS等で明示できるようになりました。
メールやFAX、Eメール、SNS等で明示できるのは、上記「絶対的明示事項」のうち1~4です。
ただし、メール等で明示する場合は、以下の要件が必要となります。
1 労働者の希望があること
2 出力して書面を作成できること
労働条件の明示がない場合は違法
労働条件を明示していない場合は違法となり、30万円以下の罰金が会社側に科されます(労働基準法120条1号)。
処罰されるだけでなく労働条件を明示していない場合、労働者側から即時に契約を解除する権利が発生します。
就活生は雇用契約書に署名する前に労働条件の明示を求め、労働条件通知書の発行を求めましょう。
それでも明示されない場合は、労働組合があれば組合に、なければ労基署に相談しましょう。
労働条件の明示がない転職は辞退すべきか?
請求したにもかかわらず労働条件の明示がない場合は、会社側は法律違反を犯しています。
このような場合は内定を断り辞退することができます。
労働条件は働く上での基本的なことですので、明らかにされない労働条件で雇用契約を結ぼうとする企業はコンプライアンスに問題があり「ブラック企業」である可能性が高いです。
労働条件の明示 まとめ
1 労働条件の明示は会社側の義務
2 絶対的明示事項は必ず明示しなければならない
3 絶対的明示事項で「昇給」意外は書面で明示する
4 労働条件の明示がなければ違法
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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